【5年生DP】「父と暮せば」を読む ~戦争をどのように描くか~

ねらい

DP(ディプロマ・プログラム)の授業では、一般的な「現代文」の教科書を使用していない。教師が選んだ作品(または生徒が選んだ作品)が教材(考えるためのテクスト)となる。

DPのカリキュラム要件として、複数の文学ジャンルを選択する、という項目がある。評論文や小説ばかりでなく、詩などの韻文や、高校の授業ではあまり扱われない戯曲、さらにはマンガを使うこともある。

今回は、井上ひさしの戯曲「父と暮せば」を教材として、作者が戦争をどのように描いていったかについて探究する。とくに作品から読み取れるテーマ(原爆の悲惨さ、家族の愛情、生き残りの罪悪感など)や、表現上の工夫、作品からにじみ出るユーモアについて分析・考察していくことをねらいとした。

 

概要

(1)事前学習

生徒には、事前に作品を通読してくるように指示している。

読後の感想を聞いてみると、面白かった、いい話だった、などと興味が高まっている様子だった。

授業のはじめに、ふせんを使って作品から読み取れるテーマを書き出していき、グループ化する、という活動を行った。これにより今後の探究の方向性を定めた。

 

(2)個人口述

全部を詳細に分析するのは不可能なので、教師の方であらかじめ場面を指定した。

課題となる文章を指示し、20分程度の時間をかけて分析する。

その後、10分程度の口述発表と、5分程度の質疑応答を行う。

この学習を通して、テクストを分析的に読解したり、意見を論理的に構成したりする力を伸ばす。

DPの最終試験で個人口述があるが、そのための練習にもなっている。

 

(3)メディアの比較分析

より深く学ぶため、こうの史代の「夕凪の街」(マンガ。これも原爆投下後の広島を描いた作品)を読み、比較する課題に取り組んだ。

まずは「夕凪の街」単体で、作品に描かれているテーマや、マンガ表現の工夫について分析し、レポートを作成した。

次に、「父と暮せば」と比較し、その共通点や相違点について考察した。

 

成果(ふりかえり)

MYPのときから詩の分析やメディアの分析に繰り返し取り組んでいるため、今回のテクスト分析(戯曲、マンガ)も慣れた様子だった。

DPの最終試験(内部評価)でハイスコアを取るためには、詳細な分析や綿密な構成が必要だが、今後はそれに向けて努力していくことになる。

少なくとも、分析的な読み方を身につけることで、作品について深く学び、理解することにつながっていくだろう。

また、物語を知ることで、歴史的背景に興味が出始め、もっと歴史を知りたい、という気持ちがわいてきたようだ。

(関康平)