【2年生~4年生・地学】地形探究2019~渋谷川の秘密~

ねらい

本校では現在、高校課程の通常授業で地学を開講していない。また、中学課程の理科の授業で地学分野を学ぶ際、通常授業では野外での観察を行うことは難しい。1年生の磯のフィールドワーク、2年生の森のフィールドワークでは野外での観察を行うことができるが、地学系のテーマは必要な前提知識が多く、限られた時間での検証も難しいため、生徒の探究テーマはどうしても生物系中心になってしまう。

地学は「総合科学」とも呼ばれ、自然についての根源的な問いを扱う面白く重要な分野であり、地学を学ぶことは理系を中心とした総合的な学力を高めることにつながる。そこで、本単元では、本校生徒が野外での観察をもとに地学を学ぶ機会を設け、生徒の地学に対する興味関心を高めるとともに、本校の理系を中心とした総合的な学力を高めるための土壌づくりを行うことをねらいとする。

また、学年行事として行うフィールドワーク以外にもフィールドワークを行う機会を設けることで、生徒のフィールドワークへの興味関心や技能を高め、本校の探究学習を深化させる役割も果たす。また、東京周辺でフィールドワークを行うことにより、地域学習にもつなげる。

さらに、本単元は理科の地学分野にとどまらず、地理や歴史、都市工学、文学といった他分野・他教科の内容とも大きなつながりを持つ内容であり、本校の学際的な学びを推進することにもつなげる。

 

概要

本単元は、本校2~4年生の有志生徒を募り、2019年5月24日(金)と2019年11月2日(土)の2回にわたって行った。原宿・渋谷周辺の地形観察ポイントをめぐり、渋谷川を中心に東京周辺の大地の成り立ちと都市計画について考察した。2日間で別のルートを回ることで、多角的に考察した。後日、放課後の時間などを使い、理科室にて考察して分かったことを模造紙にまとめた。

 

成果(ふりかえり)

野外調査の2日間を通し、渋谷川の源流のある明治神宮御苑、地下に暗渠となった川が流れるキャットストリートや宇田川遊歩道、童謡「春の小川」の記念碑、開渠区間の渋谷川の景観を活かした商業施設、東京都の「清流復活事業」の一環として渋谷川に下水処理水の放流を行っている地点など、多くのスポットを観察することができた。観察を通して、地形と関連した水の循環の存在、時代とともに変化する街の景観の様子、自然を活かす都市計画の工夫など、多角的な視点で調査地域を考察することができた。普段何の気なしに歩いていたのでは気付かないような視点で自分の暮らしている街を眺めることで視野が変わり、感動している生徒の表情を見ることができた。

野外調査後の理科室でのまとめ学習では、調査地域の昔から今までの移り変わりを視覚的に分かりやすく伝えるため、模造紙に渋谷・原宿周辺の大きな地図を描き、そこに渋谷川や宇田川の流路を暗渠となっている部分も含めて示し、地形観察ポイントの位置とそこでの観察結果を記した。地図を作成した後、参加生徒を中心に話し合い、「原宿から渋谷の裏表」というタイトルを考えた。このタイトルには、原宿駅での集合から渋谷駅での解散まで色々な観察ポイントを歩いて巡る中で、調査地域に隠された裏側の姿を見ることができたという思いが込められている。

今回の活動が好感触だったため、来年度以降も、調査地域を変えて継続して取り組んでいきたい。

(渡辺真伍)